妊娠すると、優先席問題の当事者になる
普段から話題に上がる「電車のマナー」問題。
その中でも、「優先席に座って譲らない人」は、定番のネタの一つとして、よく盛り上がります。
私は、普段から優先席の近くに乗る機会も少なく、
「元気な人は座らなければいいじゃん」
「もし座ったら、譲ればいいじゃん」程度の認識でしたが…。
妊婦になって、突然、優先席問題の当事者になりました。
まず妊娠初期は、つわりのため、5分や10分車内で立っているだけで、気持ち悪くて耐えられません。
優先席に直行して、譲ってもらえるのをひたすら待ちます。
妊娠中期、やっとつわりが落ち着いてきたなと思ったら、
今度はお腹が張ったり、息切れしたり、疲れやすくなるように。
病院で「お腹が張ったらすぐに座るように」と厳重注意を受けているのに、
優先席が埋まっていて座れない…という苦しみに陥ります。
そして妊娠後期。もうお腹が大きく、駅まで歩いた時点で腰が痛い、息切れと動悸が激しい。
そこに、つわりが復活して気持ち悪さが重なります。
私は片道20分程度の電車通勤でしたが、
たった5分座れないだけで、非常に苦しい毎日が続きました。
そんなわけで、妊娠してから7ヶ月ほど、
マタニティマークをつけて優先席の前に立ちつづけたので、
当事者になって、初めて気がついたことがたくさんありました。
意外と譲ってもらえる
そう。優先席、意外と譲ってもらえました。
毎回ではありませんが、
妊娠の初期は3回に1回くらい、お腹が膨らんでくると2回に1回くらい。
お腹が特大サイズの妊娠8ヶ月頃は3回に2回くらい、譲ってもらえたように思います。
私は神奈川県内に住んでおり、朝のラッシュで座っている人の多くは、「これから東京まで1時間くらい乗る」人が多い。
そのため、優先席でも、多くの人は寝ているか、寝たふりをしている状態で、
もう「譲る気はありませんよ」というメッセージを全身で発していました。
本当は、そういう場合は、初めから優先席以外に座ってほしいわけですが、
それでも、そんな中で譲ってくれる人が現れると、
気持ち悪さや息切れで頭がいっぱいの妊婦としては、神に出会ったような気持ちになりました。
そして、「マタニティマークをつけて嫌がらせをうけた」という話も聞きますが、
一度もそんなことはありませんでした。
もしかしたら嫌な顔をした人はいたかもしれませんが、全く気づかず…。
「おじさんは○○」「女性のほうが○○」という迷信
よく優先席の話題で盛り上がるのが、
「おじさんは意外と譲ってくれる!」「おばさんの方が厳しい!」等々、年齢や性別における傾向についての見解。
今回の経験を踏まえた結果、実際どうだったかというと…
年齢も性別も特に関係なかったです。
譲ってくれる人は譲ってくれるし、譲ってくれない人は譲ってくれない。
おじさんでも、おばさんでも、若者でも、イケメンでも、NOTイケメンでも同じです。
実際に譲ってもらったのは、30代から50代の男性が多かったように思いますが、
私が乗っていたのは通勤時間帯なので、そもそも乗車している割合が多かったのでした。
「やさしいから譲る」より「ルールだから譲る」という感覚
これは新たな発見でした。
当事者になるまでは、特に深く考えたこともなく、
「やさしい人は譲るし、冷たい人は譲らないんだろうな」と自然に思っていました。
ところが、実際に優先席を譲ってもらうときは、
やさしい感じで声をかけて譲ってくれる人もいますが、
多くの人は事務的に、「あ、どうぞ」という感じなのです。
「妊婦さんだ!辛いだろうな、譲らなくちゃ」ではなく、
「あ、妊婦だ、ルールだから譲ろう」という感じ。
本音では、「あー本当は座っていたいのに。今日はハズレだな」と思っているかもしれません。
でも、ルールをわかっている上で、自分が優先席に座ったんだから、妊婦が来たら席を譲る。
そういう認識なんだと思います。
別にやさしさを強いているわけではなく、
決められている優先席くらい、体が不自由な人や妊婦さんに譲りましょうよというルールを、みんなで共有しているんだなぁと。
冷たく感じる人もいるかもしれませんが、その事務的な感じが、私としては、非常に助かりました。
世の中には脚が不自由な人が多い
もうひとつ新たな発見は、自分が思っている以上に、脚が不自由な人が多いということ。
優先席付近に乗ると、すでにマタニティマークをつけた人が立っていることがよくありましたが、
それと同じくらい、「脚が不自由な人が立っている」こともありました。
障害なのか怪我なのかはわかりませんが、
松葉杖やギブス、その他の補助具や杖などを駆使して、どうにか立っているわけです。
それでも誰も優先席を譲ってくれない場合が多いことに驚きですが、
それとともに、こんなに脚が不自由な人がいるんだな、ということ自体にも驚きました。
妊娠中の気持ち悪さや、電車通勤のしんどさの中で、
唯一の救いは、「永遠に続くわけではない」ことだったので、
ずっと脚が不自由な人や、何かしらの疾患を持っていて電車がしんどい人は、
どれだけつらいことか…としみじみ考えてしまいました。
妊婦になって社会勉強をした気分です
というわけで、妊婦になって初めて優先席の当事者になって、いろいろと考えさせられました。
よく「マイノリティ」という言葉が使われますが、
今回初めて、妊婦である自分はマイノリティなのかもしれない、と感じました。
それは、「少数派」という意味ではなく、
「大半の人と同じ行動をするだけで、大きな苦痛が伴う」ということ。
電車の中で立ったり、階段を早足で歩いたり、満員電車でぐいぐい押されたり。
これまで当たり前で、特に何の気なしにしていたことが、ものすごく苦しい。時には気持ち悪くて倒れそうになる。
それだけで、こんなにも生きづらいのか…!と驚きました。
妊婦だけでなく、持病や障害、その他の理由で、
同じような状況と日々格闘している人はたくさんいるはずです。
私の場合は、妊婦になって、ちょっとは視野が広がったかな、社会勉強になったかな、と思います。
というわけで、優先席に座ったら、ぜひ妊婦さんや脚の不自由な人、その他対象となっている人に、席を譲ってください!!
心の中で、「ちぇ、せっかく座ったのに」と思っていても構わないので…!!!