さすがにこれは…と思ってしまった動画がこちら。

東京都による「結婚に向けた気運醸成のための動画」

東京動画という、東京都公式の動画チャンネルを発見。
そこにアップされていたのが、
この「結婚に向けた気運醸成のための動画」なのです。


最近、結婚や子育て関連の広告やキャンペーンは、
発表するたびに、どんどん炎上していますが…。

何かが炎上するたびに、
「うーん、この表現はまずいと思うけれど、作った人の気持ちもわかる」
「きっと熱意を持って作ったんだろうけど、見方によっては差別に感じてしまうだろうな」
と思うことがよくあります。

しかし、この動画については、
「作った人の気持ちがわからない…」というのが正直な気持ち。
もっと言ってしまうと、
「この動画で、結婚への意欲を刺激できると思ったんだろうか?」
と疑問に思ってしまいました。



いったい誰を対象にした動画なのか?

そもそも、この動画は、誰に向けたメッセージで、
どんな人たちの「結婚への機運を醸成」しようとしたんでしょうか?

ホームページには、
「結婚を希望する方が、
 東京大会が開催される2020年を具体的な目標に、
 一歩踏み出せるよう後押しをし、
 社会全体で結婚を応援するための動画を、都で初めて作成しました。
 是非ご覧ください。」
と説明書きが。

わたしは動画を見たあと、この説明文を読んで、びっくりしました。
この動画は、「結婚っていいものだよ」と訴えているような動画なので、
「結婚する意欲がない人」が対象ならともかく、
すでに「結婚を希望する方」が対象だとは、全く予想できなかったからです。
もし自分が「結婚を希望する方」だったら、
「だから結婚したいんだけど出来ないんだよ!」「どうすればできるんだよ!」としか思わないだろうな…と。

しかも、「一歩踏み出せるよう後押しをし」って、
結婚を希望する人は、一歩を踏み出す勇気がないから、結婚できないんでしょうか…。
そもそもの相手と出会う環境や、仲を深めやすい社会が求められているのではないでしょうか。

どのシーンで「結婚を希望される方を後押し」するのか。

対象としている「結婚を希望する方」にしても、
もしくは結婚する意欲がない人にしても、
この動画のどこの部分で、「ああ、なるほど、それなら結婚しよう!頑張ろう!」と思うのでしょうか。

祖父母が、第一回の東京オリンピックをきっかけに結婚したシーン?
それとも、2020年の東京オリンピックを楽しみにしているシーン?
もしくは、友人が「一人が気楽と言っていたけど結婚して楽しそう」なシーン?

うーん。謎です。

まずは、祖父母のエピソード。
第一回目の東京オリンピックのときは、
日本が急成長して、
オリンピックが開催できるほどの国になって、
「この大きな時代の節目を共に迎える」ことに陶酔できたのかもしれません。
初めてのテレビを買ったり、貴重なチケットを手に入れたりして。
それがロマンチックだったと言われれば、そうだったんだろうなぁと思う。

でも、第二回目の東京オリンピックは、そんな時代の節目でもなければ、象徴でもない。
オリンピックを一緒に見たいから結婚しようと言われても、
「いやだから結婚する気ないし」で終わってしまうかと。。

さらにそこに、祖父母エピソードとは関係のない、
「結婚した友人あるある」エピソードの紹介が入ります。
いやそれ現実でよく見かけるシーンだけど…。
そんなことわかっているよ…だから何…。

なんというか、結婚の意欲を刺激されるのではなく、
既婚者が「なんで結婚しないんだろう」と思いながら、
「結婚っていいよ!」と、言いたいことをただ並べたような動画になってしまっているんですよね。

つまるところ、結婚していない人の意欲を高める動画ではなく、
既婚者が言いたいこと言うための動画なんじゃないでしょうか…。

当事者に寄り添う、というシンプルなこと。

なんだかダメ出しだらけで申し訳ないのですが…。
結局、こういう動画や言葉で誰かに働きかけをして、
世の中をよくしようとするときは、
当事者に寄り添うことが基本中の基本なんだな、と思いました。
そして、当たり前のように見えて、なかなか出来ていないのかもしれないなぁ、と。

この動画からは、
「少子化を解決したい」
「既婚率をアップしたい」
「オリンピックを意味のあるものにしたい」
という、作り手側の気持ちは気持ちは伝わってきます。

でも、「当事者である未婚者・非婚者の気持ちに寄り添う」ということは、
まったく出来ていないように感じました。
だから、よくわからない、心に響かない動画になってしまったのではないでしょうか。

先日、某絵本作家さんの歌詞が大炎上していましたが、
あれは、一部のお母さんの気持ちを汲み取りすぎて、
「それを歌という形で子供に押し付けるのはどうなの?」
「他のお母さんを、「母親はこうあるべき」と追い詰めてしまうのはどうなの?」
という論争を巻き起こしていました。

一部の当事者の立場に立っているからこそ、
強い共感を引き出したり、強い嫌悪感を抱かせたりと、
いい意味でも悪い意味でも「当事者の心に訴えて揺さぶる」ことに成功していたんだと思います。

でも、そもそも当事者の立場に立てておらず、気持ちに寄り添えていないと、
炎上すら起きない、何が言いたいのかよくわからない、で終わってしまう。
それは、お金と労力を使った事業(しかも税金)としては、とても残念なことだなぁと。

いくら世の中の問題を解決しようとしても、
まずは、当事者の気持ちに寄り添おうとしないと、何も始まらない。

この、「結婚に向けた気運醸成のための動画」を見て、そんなことを思ってしまったのでした。




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